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保険医新聞7月号主張

診療報酬改定が実際に始まって
― 医療現場に混乱をもたらした今次改定は見直すべき ―
 2024年度の診療報酬改定は、本体プラス0.88%、ネットではマイナス0.12%の改定となった。今回は、充分な周知徹底期間を設けるべく6月実施となったが、厚労省からは通知・事務連絡が何度も出され、これを確認する作業で医療現場は混乱した。医療機関のための周知期間のはずが、厚労省の「とりあえず改定して後は6月までに通達すればいい」と言わんばかりの後出しじゃんけんに医療機関は翻弄された。改定はわかりやすく簡素化するべきである。

 「医療DX推進体制整備加算」においては、様々な経過措置が出されたが、複雑怪奇である。マイナカードの使用実績についても、実績要件は今後協議するなど曖昧である。また「ベースアップ評価料」は、煩雑な届出や報告を求めているが、本来医療機関に負担をかけずに基本診療料を大幅に引き上げて、賃上げ原資を手当てするべきである。また、算定したことによって資金繰りが苦しくなる医療機関も出てくると思われる。

 そして、特定疾患療養管理料から高血圧・糖尿病・脂質異常症の3疾患が除外された影響は大きい。減収はもとより、患者の選定・同意書の作成に時間をとられ、本来すべき診療もままならない状態である。患者と真摯に向き合う医師の裁量権を奪う行為であり、従来にもどすべきである。加えて、10月から始まる長期収載品の給付制限についても、そもそも処方の要不要は医師が決める以上、給付制限は理屈が通らない。断固反対するべきである。

 歯科においては、賃上げ対応分を除くと、引き上げ分は前回のプラス0.29%を大きく下回る。また、「医療情報取得加算」や「医療DX推進体制整備加算」が新設等されたが、オンライン請求をしている医療機関が少なく、システム構築に時間がかかり混乱をきたしている。そして、複雑な施設基準の増加、クラウン・ブリッジ維持管理料の対象から歯科用貴金属材料の単冠が外れたことなどによる影響が出ている。

 今次改定は、コロナ禍で感染防止と治療に忙殺され疲弊しきった医療機関に、膨大な改定内容に伴う作業や事務負担を押し付けるものであり、このような改定は許しがたい。医療現場に混乱をもたらした今次改定は見直すべきである。今後も当協会で診療報酬の不合理の是正や医療費総枠拡大を政府に強く訴えていきたい。

(2024-7)