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保険医新聞6月号主張
国保の都道府県化
「すべての人が無理なく払える保険料」をめざし国庫負担増額を
国民健康保険(以下国保)の保険者が、今までの市町村でなく都道府県になった。いわゆる「国保の都道府県単位化」が始まった。「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険等の一部を改正する法律」のもとに「国保の財源安定化のため」という名目で行っているが、どうみても国が責任を放棄して県に押し付け、国民に負担を強いているとしか考えられない改正である。
国保が都道府県化されても保険料はこれまでどおり市町村が決定することに変わりはなく、都道府県が提示する納付金の負担額や標準保険料率を参考に保険料が決定される。各市町村の医療費、国保加入者数や所得を基準に決定され(多少の年齢構成の調整はあると思われるが)、医療費が上がれば保険料は上がるという仕組みを強化している。これは、「保険料を安くしたいなら、病院・診療所に受診しないようみんなで努力しましょう」という恐ろしい受診抑制への誘導である。
実態としては、いくつかの県が発表した国保料の試算では、加入者の少ない自治体では保険料が上昇している傾向がある。また、保険料の統一を導入する都府県もあるが、保険料の高い自治体に足並みをそろえている可能性が高い。
ただでさえ保険料の滞納により保険収入が減少し国庫負担金も減らされ自治体は苦しい運営をせまられている中、さらに保険収入の増加のため今までより滞納者に対する徴収の強化をせざるを得ない状況に陥っている。実際、滞納者への差し押さえ件数が増加しているようである。
先日の政策部会での県会議員との懇談で明らかになったことだが、岐阜市において国保料滞納者への差し押さえ件数が、平成25年度は1件、平成26年度は9件、平成27年度は116件、平成28年度は181件、平成29年度は二月末までで約200件と平成27年頃より急増している。滞納するには理由があり、その理由も考慮せず差し押さえをするのは、大いに人権問題であり弱者いじめである。払えなければ無保険となり医療を受けらない現状は、「国民皆保険制度の目的」から逸脱している。無保険であるからと体調が悪く病院や診療所を受診する人を診療しないわけにはいかず、診療する医師・歯科医師への精神的負担はかなり大きい。
国民の健康を守るには、弱者に対しての保護も考慮し、国保料の引き下げ、地域格差をなくす為の単位化の見直し、今までどおり市町村自治体の一般会計からの繰り入れの継続、国庫負担金の増額などで、「すべての人が無理なく払える保険料」を目指すべきであり、この運動をさらに推し進めていくべきであり国に強く訴えたい。
(2018-06)