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健康保険証廃止法案の成立に満身の怒りを込めて
強く抗議する(声明)
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参議院本会議は6月2日、健康保険証廃止を含むマイナンバー法等改定法案を与党などの賛成多数で可決した。各種証明書等の誤交付、公金受取口座や医療情報の誤登録などシステムの根幹に関る深刻な事態が次々と明らかになる中、法案成立を強行したことに強く抗議するものである。
「無保険」扱いをつくり出す
健康保険証廃止法案は、保険者が全ての被保険者に健康保険証を交付する義務を被保険者からの「申請主義」に転換するものである。参考人質疑(参議院特別委員会、5月17 日)にて私、竹田(全国保険医団体連合会(保団連)副会長)が指摘したように、「無保険」扱いとなる者を政策的につくり出す愚策であり、国民皆保険制度を崩壊に導くものと言っても過言でない。現に、全ての被保険者が確実に現物給付で保険診療を受けることができるための措置を講じるなど保険証廃止にかかわるだけで10項目の付帯決議(全20 項目)が参議院委員会で採択されている。マイナンバーカードに「メリットがある」というならば希望する者が利用すればよいだけである。なぜ健康保険証を廃止しなればいけないのか全くもって合理性がない。マイナンバーカードを利用しない/できない者を医療から切り捨てるような施策は到底認められるものではない。
保険料払って10割負担
マイナンバーカードで受診した者はどうか。保団連が全国の医療機関で実施した調査結果では、6割の施設でオンライン資格確認でのトラブルが発生し、「資格無効・該当なし」などと表示された等の返信が続いている。トラブルの対応については7割が「健康保険証で資格確認」と回答しているが、国を信用して健康保険証も持参しないまま、国が示す運用指針に基づき「10 割全額」負担となっている患者も少なくない。不備・瑕疵だらけのデータベースの下、さらに健康保険証も廃止して、保険料を支払う患者から10 割負担を負わせるということか。もはや国家的“詐欺”と言うべき事態である。
全容解明なく採決ありえない
他人の情報紐付け(2022年:約7,300件)について、厚労省は全国の健保組合等に登録データ点検を依頼し、8月以降に結果を公表するとしている。加えて、保団連の調査では、本人情報と他人情報が同時に表示されたとの声が複数の医療機関より寄せられている。誤登録をめぐる事態の全容も見通せない中、採決を強行したことは許されるものではない。
他人の医療情報の紐付けは投薬・治療情報の取り違えにつながり、医療事故を招きかねない重大問題である。にもかかわらず、国は医療情報の閲覧運用を中止しない。同様に、マイナポータルから他人(例えば同性・同名、同年齢など)の医療情報が流出する可能性があるにもかかわらず、利用停止もしない。国民の命と健康を軽視していると言わざるを得ない。
隠ぺい・現場に責任転嫁
そもそも、医療情報の誤登録、公金口座の誤登録やマイナポイント誤交付にしても、国の強引なマイナンバーカード普及推進策の下で起きるべくして起きたエラーである。しかし、厚労省やデジタル庁は公表を遅らせたあげく、自治体や保険者に責任をなすりつける姿勢に終始している。自身に不都合な事実を隠ぺいし、政府が現場に責任を押し付ける中で、法案の正当性はないと言わざるを得ない。
本会は、今回の健康保険証廃止法案の成立について、改めて満身の怒りを込めて強く抗議するものである。
2023年6月2日
岐阜県保険医協会 会長 竹田智雄
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